マンションの水漏れは誰が直す?|共用部と専有部の境目と費用負担

「下の階の方から、天井にシミが出ていると言われた」「洗面台の下で漏れているが、うちが払うのか管理組合が払うのか分からない」。マンションの水漏れでいちばんこじれるのが、この費用負担の話です。
結論から言うと、判断の軸は「漏れている場所が共用部分か、専有部分か」です。この記事では、分譲マンションの管理規約でどこまでが共用部分とされているのか、費用は誰が負担することになっているのかを、国土交通省が公表している標準の規約に沿って整理します。賃貸にお住まいの場合は考え方が変わりますので、そちらも後半で触れます。
マンションは「共用部分」と「専有部分」に分かれている
分譲マンションの管理のルールは、そのマンションごとの管理規約で決まっています。多くの管理組合は、国土交通省が公表している「マンション標準管理規約」をもとに規約を作っています。以下は、その標準管理規約(単棟型・令和7年10月17日改正)の内容にもとづく説明です。
まず押さえておきたいのが、水まわりの配管がどこまで共用部分なのかという線引きです。標準管理規約の別表第2(共用部分の範囲)には、共用部分に含まれる建物の附属物として次のように書かれています。
「各種の配線配管(給水管については、本管から各住戸メーターを含む部分、雑排水管及び汚水管については、配管継手及び立て管)等」
ここを読み解くと、水まわりの線引きはこうなります。
▶ 給水:道路側の本管から各住戸の水道メーターまでが共用部分
▶ 給水:メーターから先、住戸の中の給水管は専有部分
▶ 排水:配管継手と立て管(縦に通っている太い管)が共用部分
▶ 排水:立て管につながるまでの住戸内の横引き管は、専有部分として扱われることが多い
もうひとつ、意外に思われるのが窓まわりです。標準管理規約は、窓枠及び窓ガラスは専有部分に含まれないものとしています。玄関扉も、錠と内部塗装部分だけが専有部分です。「自分の部屋の中にあるもの=すべて専有部分」ではないということです。
ただし、これはあくまで国が示している標準の内容です。実際に適用されるのはお住まいのマンションの管理規約ですので、最終的にはそちらをご確認ください。管理規約は分譲時の書類一式に入っており、手元になければ管理会社に写しを求められます。
費用は誰が負担することになっているのか
標準管理規約の第21条第1項は、敷地及び共用部分等の管理について「管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする」と定めています。つまり、共用部分側の配管が原因なら、修理は管理組合の負担で行われるのが原則です。
問題になりやすいのは、専有部分の配管です。第21条第2項は、専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分について、共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、総会の決議を経て管理組合が行うことができる、としています。
ここで実務的に効いてくるのが、同規約のコメント(第21条関係⑦)です。第2項の対象となる設備として配管・配線等を挙げたうえで、費用について次のように書かれています。
「配管の清掃等に要する費用については、第27条第三号の『共用設備の保守維持費』として管理費を充当することが可能であるが、配管の取替え等に要する費用のうち専有部分に係るものについては、各区分所有者が実費に応じて負担するものである」
整理すると、こうなります。
▶ 清掃など維持のための費用は、管理費から出せる場合がある
▶ 取り替えの費用は、専有部分にあたる部分については各区分所有者の負担
▶ 共用部分の取り替えと同時に行うと費用が下がる場合があり、一体で工事することも考えられる
「配管なんだから全部管理組合でしょう」と思ってしまいがちですが、同じ配管でも、清掃なのか取り替えなのか、共用部分なのか専有部分なのかで結論が変わります。ここを知らずに話を始めると、管理会社との会話がかみ合いません。
なお、災害などの緊急時については、同じコメントの中で、給水管・排水管の補修が「共用部分等の損傷・滅失を防止して現状の維持を図るための比較的軽度の行為」の例として挙げられています。緊急の応急処置と、その後の本格的な修理とでは、扱いが分かれるということです。
賃貸にお住まいの場合は、考え方が変わります
分譲マンションの区分所有者ではなく、賃貸で借りている場合は、管理規約ではなく貸主との関係で考えます。
民法第606条第1項は「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。」と定めています。設備の経年劣化による水漏れであれば、原則として貸主側の修繕義務の範囲ということになります。
また、民法第607条の2は、修繕が必要な場合に借主が自分で修繕できる場合として、貸主に通知した(または貸主が知った)のに相当の期間内に修繕しないとき、そして急迫の事情があるときを挙げています。
ただし、実際には賃貸借契約書の特約や、原状回復のルールも関わってきます。賃貸での費用負担の考え方は賃貸で水漏れ・つまりが起きたら費用負担は誰?大家・管理会社・入居者の判断基準で詳しく整理していますので、そちらもあわせてご覧ください。
階下に漏れてしまったときの順番
費用の話は大事ですが、水が出ている最中にする話ではありません。順番としては次のようになります。
▶ ①水を止める(止水栓、わからなければ元栓)
▶ ②管理会社・管理組合へ連絡する
▶ ③濡れている範囲と日時を写真で残す
▶ ④階下の方へ連絡する(管理会社経由になることもあります)
▶ ⑤原因箇所を調べる
▶ ⑥費用負担を確認する
止め方がわからないときは、水漏れしたらまず水を止める|止水栓・元栓の場所と閉め方の手順をご覧ください。マンション特有の初動についてはマンションで水漏れが発生したらどうする?被害を最小限に抑える正しい初動対応にまとめています。
③の記録は、あとから費用負担を話し合うときの材料になります。濡れた場所、広がり方、気づいた時刻。スマートフォンで撮っておくだけで十分です。
階下への賠償については、加入している保険が使えることがあります。個人賠償責任の補償や、管理組合が加入している保険が関係する場合もありますが、使えるかどうかは契約の内容次第ですので、保険会社や管理会社にご確認ください。連絡の流れは不在中に水漏れが起きたときの保険と連絡フロー|帰省・旅行前の備えで触れています。
結局、先に決まらないといけないのは「どこから漏れているか」
ここまで読んでいただくとお分かりのとおり、費用負担の議論は原因箇所が確定してからでないと始まりません。共用部分の立て管からなのか、住戸内の横引き管からなのか、器具そのもの(蛇口や便器、給湯器)からなのか。そこが決まらないうちは、管理組合も管理会社も判断のしようがないのです。
ところが、水漏れは見えている場所と漏れている場所が離れていることがよくあります。床下や壁の中を通っている配管の場合、天井のシミの真上が原因とはかぎりません。原因の切り分けには、器具を止めて様子を見る、水道メーターのパイロットを見る、といった手順を踏むことになります。
排水の音が階下に響くといったご相談も、専有部と共用部のどちらの話なのかで対応が変わります。こちらはマンション排水音が階下に響く原因と防音対策|専有部・共用部の見分け方で解説しています。
なお、共用部分に手を入れる作業は管理組合の判断が必要になります。実際には、まず住戸側で原因を切り分けて、共用部分が疑われる段階で管理会社へ引き継ぐ、という流れになることが多いところです。
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